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日本労働評議会(労評) 神奈川県本部
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2024/05/04 (Sat) 00:05
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2023/04/11 (Tue) 15:44

2024年問題とは?

交通運輸業をとりまく労働法関連の大幅な改正が2024年4月から施工される。

いよいよ1年というタイムリミットを切った。 何が変わるのか、交通運輸労働者を取り巻く労働環境がどうなってしまうのかについて、触れていきたい。


第2回 持続可能な物流の実現に向けた検討会 資料から抜粋
(クリックorタップで拡大)

交通運輸労働者の特殊性

日本の交通運輸に従事する労働者は約350万人といわれている。

交通運輸とひとくちに言っても、その業種は多様だ。

製造業における企業間物流や建築・土木現場への資材の運搬、農林水産業における物資の輸送、卸売店や小売店への商品の運搬、郵便物の運搬と配達、宅配、鉄道、バス、タクシーによる人の輸送、また海運、空輸、等々・・・

このように高度に分業化され、あらゆる全産業の企業活動、さらに住民の生活を日々支えている。

つまり交通運輸労働者は、経済構造全体の重要な一翼を占めているといえる。

しかし交通運輸労働者には現在、労働基準法における時間外労働の上限が存在しないのだ



言い換えれば、時間外労働の上限が無いからこそ、安定した物流とニーズの多様性に応えてきたといえる。

楽天やAmazonで速達ネット注文をしたことがある人なら、当日便など、その速さに驚くこともあるだろう。


2019年4月に行われた働き方改革法案の猶予措置として5年間、交通運輸労働者には明確な時間外労働の上限規程は定められていなかった。

その交通運輸労働者にたいしても、ついに上限規制が加わろうとしている。

それが2024年問題といわれる、交通運輸労働者をとりまく働き方改革だ



賃金はどうなるのか?

交通運輸で働く皆さんなら言わずもがなというところではあるが、大抵の場合は下がることが予測される。

まず直撃するのが「時間外労働」、つまり残業代だ。

時間外労働規制がかかれば、当然残業時間は減ることになり、変動給は下がる。

また、「60h超過手当」も、時間外労働が減れば同様だ。



次に、「長距離手当」などといわれる移動距離や物量・重量に応じた手当だ。

長く働けなくなる分、時間的、物理的に長距離の移動に規制がかかる。



各会社によって名目は様々だが、共通していえるのは「変動給」にかかる減額だ。

それに加え、交通運輸業は他業種に比べ、固定給が割安に設定されているところが多い。



これは事例だが、トールエクスプレスジャパンのように、固定給を高くみせかけて時間外労働にさしかかると、固定給部分を減額するような体制をとる資本がある。

クリックで移動☞:トールエクスプレスジャパンの賃金規則の問題点とは

また、アート引越センターのように基本給を133,500円として、最低賃金法を順守するために「地域手当」とよばれるものを全国各地の最低賃金法に合わせ(神奈川は40,000円、北海道は4,000円)支払うなどし、あくまで基本給自体は割安を維持している。

タクシーも歩合制を敷くところが圧倒的に多く、歩合を抜いた場合の賃金は最低賃金であることも少なくない。

また、サカイ引越センターは基本給が5万円という報道も見たが、こういった極端な例は少なくても普遍的に最低賃金であることが分かる業態である。




2024年問題をどう乗り越えるべきか


このように、社会インフラを下支えしている交通運輸労働者が、低賃金、長時間労働で生活困窮を強いられていることを忘れてはならない。

それに増して、近年の物価上昇率や、年金や各種税金などの控除額が上昇していることから、労働者が自由に使えるお金(可処分所得)は年々減り続けている。

2024年に突入すれば、加速度的に日常生活に打撃がくることは推察できる。



それもこれも、中小企業には労働組合が組織されていないことが主要な原因だ

中小企業労働者が疲弊している横目に、大手企業労働組合は多額のベースアップを勝ち取り、労働貴族、労働者階級の敵として存在し続けている。

あたかも労働組合が春闘でベアを勝ち取った報道をするが、多くの中小企業労働者にとって無縁も甚だしい。

中小企業には組織化された労働組合が全くないため、大手企業に対する価格転嫁も実現できず、春闘のベアをかちとることなど夢物語となっている。



そもそも、資本という階級存在は、利益が上がっているからといってトリクルダウン形式に賃上げすることなどあり得ない

資本はより一層私腹を肥やし、その一方で労働者は生活の苦しさから逃れることはできない。

これが階級本質であり、階級的な非和解性である。

マルクスが生きた時代も、経済は発展し、社会はより豊かになっていったが、労働者は一向に豊かになれず、ただただ機械に隷属し、資本に搾取されていた。

時代が違っても、共通の原理が今なお生きていることを自覚しなければならない。



資本に幻想を抱き、代行主義の思想で待機主義的に待っていても状況は変わらない

そういう労働者を資本は手なずけ、階級解体された労働者を組織し、搾取、抑圧を承認する。

ゆえに「会社の常識、世間の非常識」となる。



「家族が生きていく生活費を安定させたい、もっと労働に誇りを持って働きたい。」

そう思える労働者と、労評と共に闘っていきたいと思うばかりである。
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2023/01/19 (Thu) 01:29

 

目に余るほど物価上昇が続いている。コンビニやスーパーにいけば、野菜、肉、日用品等、ありとあらゆるものが値上げである。さらにいえば、電気やガスも価格上昇の一途であり、歴史的なインフレ状態にあるのは火を見るよりも明らかだ。


日銀の発表によれば、企業物価指数は前年比9.7%上昇をたたき出し、記録上最高値となっている。さらに前月の消費者物価指数は前年同月比がついに4%となり、狂乱物価と言わずして何というだろうか。


しかし、この物価上昇率を大幅に上回る値上げをしたのが、東京特別区・武三交通圏(23区内、三鷹市、武蔵野市を指す)におけるタクシー運賃だ。昨年11月14日に変更され、その上昇率はなんと14.24%というから、それはもう狂気の沙汰である。初乗り運賃は420円から500円、加算額が80円から100円、乗車距離は初乗り1.052㎞から1.096km、加算距離が233mから255mになり、加算距離が若干伸びたとはいえ大幅な値上げであることに変わりはない。




———タクシー値上げをめぐる問題。

ロイヤルリムジングループ(金子健作代表)の2社(ロイヤルリムジン株式会社及び株式会社ジャパンプレミアム東京)は、この度の運賃値上げについて反対の意思を表明し、公定幅運賃ではない従来通りの運賃を関東運輸局に届け出た。公定幅とは、公共交通における安全や労働条件を守るために設けられた制度で、所轄の運輸局が運賃の上下幅を定め、一定の地区における運賃の下限割れ、上限割れを未然に防ぐものだ。


公定幅運賃という制度自体には合理性があるが、今回の問題は別にある。リムジンの金子社長は自身のブログにて以下のように表明している。


『今回の運賃改定にあたり、燃料高騰に対する対応としてという理由を主にしていますが、近年画期的で低燃費なハイブリット車両が導入され、むしろ燃料費は下がっている状況です。更にこの車両の導入にあたっては、東京都及び国から多額の補助金を頂戴しており、今すぐ運賃に転嫁する理由は全くありません。

むしろ直近の東京においては、繁忙時にタクシーが全く足りない大幅な供給不足を生じている状態で、今回最初に値上げ申請した業界大手の会社では、1台あたり1日6万を越えるようなかつて無い高営収の状態になっております。更に近年拡大する配車アプリ『GO』では、高額な配車手数料をお客様から取る方針も発表しています。弊社グループにおいては、お陰様で繁忙時にはタクシー車両が全く足りない大幅な供給不足が生じている状態で、弊社の予約を中心として営業をしているジャパンプレミアム社では、1日1台あたりの売上が既に業界平均を大きく上回る7万まで回復してきており、適正な利潤が取れている為です。』


(引用元:リムジンブログ


今回の値上げ理由が、①原油価格の高騰②新車両やキャッシュレス決済機器の導入③乗務員の労働環境改善のため改定率14.24%のうち約8%を賃金アップなどの費用に見立てるといった内容だった。しかし、①②の理由は背景事情をふまえて否定している。③についても、タクシー業界は歩合制による賃金体系が多いため、経営努力によって顧客から選ばれるタクシー会社となれば、おのずと営収も増加し、値上げに頼らずとも乗務員の待遇改善に繋がるのではないか。




———なぜ、この経営努力に対して国土交通省は妨害するのか?

これらのことから、14.24%の値上げは本当に必要なのか、実は周到に精査して決められたとは言い難いのだ。顧客の側に立たず、何の経営努力もせず値上げをするというのは、例えロシアのウクライナ侵略、円安ドル高の二重構造のインフレ要因があるとしてもほぼ便乗値上げに近い。


ここ数年、より一層生活が厳しい状態になっているのは紛れもない事実だ。国民が様々な値上げに苦しんでいるのだから、公共交通機関としても料金を慎重に決めるべきである。今回の値上げも、大手である4社はどのくらい値上げ幅を抑える努力をしたのかは一切分からない。


リムジングループのように、企業努力で料金据え置きでも経営ができると判断した会社に対して、国土交通省が値上げを強制し、従わなければ業務停止命令を下そうとしているのだ。中小企業の経営努力を無視して一律値上げを強制することは、病院に通う年金生活者や身体が不自由でタクシーが必要不可欠な人にとって、物価高ラッシュで経済的に疲弊している国民の生活を直撃することは疑いない。


確かに、経営努力を行っても値上げせざるを得ないという企業もあるだろうし、値上げは致し方ない部分もある。しかし、「経営努力の結果、値上げする必要がない」と表明している会社に対して、値上げを強制する国土交通省のやり方は断じて許せるものではない。資本主義社会にあっても、顧客路線を歩もうとしている企業に対する不当な扱いであり、許し難い行為である。





———国交省の行政処分反対は労働組合の社会的使命。

リムジングループの国交省への異議申し立てを傍観し、孤立させることは、国の横暴な支配を許すことになる。経営努力で値上げをしないという道理を通すため、我々労評としても声明をあげねばならない。23区、三鷹市、武蔵野市だけではない。地方各地でも値上げに向けた動きが出ているのだ。もはや都心部だけの問題ではなく、全国的な問題として扱われることになるだろう。


今回値上げを承認した関東運輸局は横浜にある。神奈川県本部としても異議申立てに連帯し、さらに亀戸周辺でのデモ・示威行動についても連帯の意思を表明する。


「便乗値上げ」と「強制値上げ」は国民目線で許し難い事案であり、労働組合の路線や理論を知っているかいないかという話ではない。現実から出発し、国民としてこのような事案があることを認識し、不条理と闘い、道理を通していくということが重要ではないだろうか。

労評は様々な階級階層の人々と統一戦線を組み、政府と独占資本の強権的支配と闘っていく使命がある。

この度のリムジングループへの弾圧を許さず、国に正しい判断を下すよう行動を起こそう!

プロフィール
  日本労働評議会(労評)神奈川県本部 mail:rohyo.kanagawa@gmail.com
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